気づけなかった
私は、彼の何を見てたんだろうと思った。見えてるつもりで、全然見えてなくて。そんな自分が嫌で嫌で、ただつらい。私のつらさなんて、彼と比べたら全然ちっぽけなたいしたことじゃなくて、彼は何を抱えていたんだろう、とただそればっかり考えてしまう。
4月から一緒に働いてた後輩の男の子。がんばりやで、本意でない異動だっただろうに、それを感じさせず、それを心配する私たちに対しても「だいじょうぶですよ」と笑っていた。必死に今の仕事と向き合い、私たちとも向き合っていたと思う。先輩や上司からかわいがられ、後輩からはしたわれ。最近のワカモノの中では、バカになることもできる、そんな有望な人。だから、私もたぶんほかの同僚も、安心しきってた。少し体調を崩して休んでも、その休み方が今になってみれば、ちょっとおかしなサイクルだったことも。風邪?って聞いても、微妙に笑って「大丈夫ですよー」としか言わなかったことも・・・。全部、サインだったのに、私は気がつかなかった。
彼は、うつ、でした。病院からの勧めでしばらく会社をお休みすることになり、それで初めてわかった。いつからかわからない、仕事だけが原因ではないのかもしれない、そもそもわかってたからって私に何かできたかもなんて傲慢なことは思えない。だけど、でも、何で気がついてあげられなかったんだろう・・・とずっと考えてる。私たちがまったく疑わなかったくらい、彼は無理をして笑って、体は悲鳴をあげてたんだろうと思うと、つらくて苦しい。私がつらくて苦しいのも間違ってると思う、そうじゃなくて、なんか、私が苦しいとか言ってはいけないんだ。休みに入る前にちゃんと会社にきて、ちゃんと仕事を整理して行った最後まで、きちんとしていた彼は、私に「言えなくてごめんなさい」と言いました。なんで、こんなこと、私は言わせてしまったんだろう。なんで、ちゃんと笑って送り出してあげられなかったんだろう。
一番なさけないのは、食欲が落ちてる自分。これは絶対ちがう。私に落ち込む資格はなくて、がんばって待っていなくちゃ。ちゃんと食べて、眠って、仕事しなくちゃ。




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